「介護職の給料は安い」という言葉をよく耳にしますが、本当にそうなのでしょうか。
本記事では、介護職の給料が構造的に上がりにくい理由を解説し、個人で実践できる確実な年収アップ戦略を具体的にお伝えします。
- 介護職の給料が安いと言われる構造的な理由と実際の平均年収データ
- 給料が上がる人と上がらない人を分ける資格・施設選び・働き方の違い
- 介護福祉士取得や処遇改善加算を活用した具体的な年収アップ方法
1.介護職の給料は本当に安いのか?


介護職の平均給与406万円は、全職種の男性平均587万円と比べると約180万円低く、女性平均333万円と比べると約70万円高い水準です。
男性が多い全職種平均と単純比較すると低く見えますが、女性平均より高いことから、介護職の給与が「本当に安い」かは比較対象によって変わります。
ただし、仕事の負担や社会的重要性を考慮すると、さらなる待遇改善の余地があると言えるでしょう。
参考:国税庁|令和6年分 民間給与実態統計調査/厚生労働省|令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果
2.介護職の給料が上がりにくい理由

介護報酬は国が定めるため事業所が自由に価格設定できず、3年ごとの改定も財源の制約から大幅な引き上げが困難です。
薄利経営の現状を収支差率データで解説します。
介護報酬とは?
事業者が利用者に介護サービスを提供した対価として支払われるサービス費用
各サービス毎に基本的なサービス提供に係る費用に加えて事業所の体制や利用者の状況等に応じて加算・減算されます。
介護サービスの価格は国が定める介護報酬によって決まっており、事業所が自由に設定できません。
報酬は3年ごとの改定で決定され、ほとんどが財源は税金と保険料のため、国民負担増への配慮から大幅な引き上げが難しい状況です。
さらに介護事業所の収入の大部分が人件費に充てられるため、報酬が上がらなければ職員の給与も上昇しにくい構造になっています。

4つの主要介護サービスを比較すると、訪問介護が4.8%と最も高く、介護医療院3.9%、老健2.4%、特養1.1%の順です。
施設系は建物維持費や人員配置基準により収支が圧迫される一方、訪問介護は固定費が少なく柔軟な運営が可能です。
ただし全サービスとも10%未満の薄利経営であり、物価高騰や人材不足の影響を受けやすい脆弱な収益構造が共通課題となっています。
参考:厚生労働省|介護報酬について/令和5年介護事業経営実態調査結果の概要
2.介護職の給料に差があるのはなぜ?

資格取得の有無が収入格差の最大要因です。介護福祉士は月1〜2万円の手当が得られ、施設形態や処遇改善加算の取得状況によっても給与水準は大きく変わります。
資格取得が収入に直結する明確な賃金体系
介護職の収入格差は資格取得が最大の分岐点です。

介護職の資格手当は、初任者研修・実務者研修が数千円〜1万円未満(約半数は手当なし)、介護福祉士が数千円〜1.5万円程度、介護支援専門員が1万円〜2万円程度が目安です。
資格が上がるほど手当も増える傾向があります。
施設側も加算要件を満たすため有資格者を優遇する明確な賃金体系を設定しており、継続的なキャリアアップが収入向上の鍵となります。
参考:レバウェル株式会社|レバウェル介護|【介護職の資格手当一覧表】相場はいくら?給料アップに繋げる方法を解説!
施設形態による給与格差と選び方

令和6年9月時点で、介護老人福祉施設が361,860円と最も高く、小規模多機能型が305,220円と最低です。
全サービス平均で前年比13,960円増加しており、特に訪問介護は16,930円増と大幅な伸びを示しています。
これは処遇改善加算の拡充や人材確保競争の激化が背景にあると考えられます。
しかし月給30〜36万円程度は全産業平均と比較すると依然低水準であり、介護職の待遇改善は道半ばです。今後さらなる賃金底上げ施策が求められます。
処遇改善加算を取得している事業所の見極め
国は介護職員の給与を上げるために「処遇改善加算」という制度を設けています。

しかし、この加算を取得して職員に還元するかどうかは、事業所の判断に委ねられています。
高いランクの加算を取得している事業所では、その分が職員の給与や賞与に上乗せされますが、加算を取得していない、あるいは低いランクの事業所では給与が低くなるのが現状です。
3.介護職で年収をアップさせる戦略

介護福祉士の取得、処遇改善加算Ⅰを算定する事業所への転職、夜勤や管理職へのキャリアチェンジ。制度を活用した戦略的なアプローチで確実な収入増が実現できます。
最短ルートで国家資格の介護福祉士を取得する
確実な収入アップの方法は、国家資格である「介護福祉士」の取得です。実務経験3年と実務者研修の修了で受験資格が得られます。
教育訓練給付金や修学資金貸付制度、働きながら費用負担を抑えて資格取得を目指すことも可能です。

この資格を取得することで、資格手当の支給だけでなく、リーダーや役職者への昇進の道が開かれるでしょう。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター|介護福祉士国家試験
処遇改善加算Ⅰを算定する事業所へ転職する
働く場所を変えることも手段です。特に処遇改善加算Ⅰなどの上位区分を取得している事業所は、国からの給付金を手厚く受け取っており、それが職員の給与に反映されています。
実際に求人を探す際は、以下のポイントをチェックしてください。
- 求人票の「特記事項」や「手当」欄に「処遇改善加算Ⅰ」の記載があるかを確認し、それを目安にします。
- 面接では「御社はどの区分の加算を取得されていますか?」と具体的に質問し、明確な回答があるかを確認します。
加算を取得するには職場環境の整備やキャリアパスの構築が必要なため、上位加算を取得している事業所は、労働環境が整った職場である可能性が高いといえます。
夜勤や管理職など働き方の幅を広げる
夜勤で働く
夜勤手当は1回あたり平均6,290円。月4回こなすだけで約25,000円、年間30万円以上のプラスになります。
老健では7,684円と最高水準で、介護医療院・特養も高め。
夜勤可能な施設へ転職するだけでも年収アップが狙える、即効性の高い戦略です。


最初は月2〜3回から始め、睡眠や食事のリズムを整えながら無理なく慣らしていきましょう。
心身の疲れを感じたら回数を減らす判断も、長く働き続けるための大切な戦略です。
現場のリーダーや施設長などの管理職
また、現場のリーダーや施設長などの管理職を目指すことで、役職手当による昇給が見込めるでしょう。

介護施設・事業所別の管理職平均給与(月給)は全体平均378,110円。
最も高いのは介護老人福祉施設の436,850円で、介護老人保健施設420,010円、特定施設入居者生活介護404,740円が続きます。
一方、通所介護事業所は361,080円と最も低く、施設間で約75,000円の差があります。
施設の種類を意識しながら管理職キャリアを目指すことが、給与アップへの確実な近道です。
4.介護職の給料に関するよくある質問

平均給料、資格手当、夜勤手当など、介護職の待遇に関する代表的な疑問に回答します。制度の仕組みを正しく理解することで、より良いキャリア選択が可能になります。
-
介護職の平均給料はどのくらいですか?
-
令和6年9月時点で、常勤職員の平均月給は施設によって異なりますが、約30万円〜36万円程度です。
各施設の平均給与
介護老人福祉施設:361,860円
訪問介護:349,740円
小規模多機能型:305,220円基本給に加えて各種手当や処遇改善加算が含まれた金額です。
-
資格を取ると給料は上がりますか?
-
はい、上がります。無資格者と有資格者では月数千円〜2万円程度の差が生まれることが一般的です。
さらに、ケアマネジャーや認定介護福祉士などの上位資格取得で管理職への道も開けます。
ただし、資格手当がない場合もあるので、事前の確認が必要です。
-
夜勤手当はどのくらいもらえますか?
-
看護職員の場合、2交替夜勤1回あたりの平均手当は6,290円です。
施設別では介護老人保健施設が7,684円と最も高く、小規模多機能型が5,400円程度です。
-
介護職の平均月収は緩やかに増加傾向です。
H30年度の22.1万円からR6年度24.9万円へと5年連続で増加し、2.8万円上昇しています。
時間給も同様にH27年度1,051円からR6年度1,262円まで211円増加し、前年比3.5%の伸びを示しています。
5.介護職の給料が安いと言われる理由と年収アップへの道筋
介護職の給料が安いと言われる背景には、介護報酬の上限や事業所の薄利経営という構造的な課題があります。
しかし近年は処遇改善加算の拡充により、全サービス平均で前年比13,960円増と改善傾向にあります。
個人レベルでは介護福祉士などの国家資格取得、処遇改善加算Ⅰを取得する事業所への転職、夜勤や管理職といった働き方の選択により、確実な年収アップが可能です。
制度を理解し戦略的にキャリアを構築することで、介護職でも安定した収入を実現できます。







