介護福祉士は、介護業界で唯一の国家資格であり、専門的なスキルと信頼性を証明できる資格です。
民間の調査によると、介護福祉士(常勤)の平均給与額は、保有していない職員と比較して月額約5万円高いというデータもあり、キャリア形成においても有利に働くでしょう。
本記事では、働きながら資格取得を目指す社会人や、進路を検討中の学生に向け、最新の試験結果を踏まえた合格率や難易度、受験資格の要件、そして4つの取得ルートについて解説します。
参考|Kiracare:介護職の給料はいくら?平均給与額や年収アップ方法
- 状況に適した4つの資格取得ルートと合格への手順
- 働きながら目指す際の「実務経験3年」の計算方法
- 最新の試験難易度と資格取得による年収アップの実態
1.介護福祉士になるには?4つの資格取得ルート解説
介護福祉士 4つの取得ルート
働きながら目指す「実務経験ルート」
「従業期間3年以上(1095日以上)」かつ「従事日数540日以上」の実務経験と、実務者研修の修了で受験資格が得られます。パート期間も合算可能です。
養成施設ルート
専門学校や短大などの養成施設で必要な科目を履修し、卒業することで国家試験の受験資格が得られます。
福祉系高校ルート
福祉系の高校で所定のカリキュラムを修了することで、国家試験の受験資格が得られるルートです。
EPAルート
経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどの候補者が働きながら資格取得を目指すルートです。
介護福祉士の国家資格を取得するには、経歴や現在の状況に合わせたルート選択が重要です。
大きく分けて「実務経験」「養成施設」「福祉系高校」「EPA」の4つのルートが存在し、それぞれに要件や学習期間が異なります。
ここでは、各ルートの概要と対象者を整理し、適した道を見つけるための判断材料を提示します。
実務経験ルート:働きながら目指す社会人の主流
現在、介護現場で働いている社会人や、これから転職して介護職に就く人が主に選択するルートです。介護福祉士国家試験合格者の多くがこのルートを経由しているという実績も見られます。
実務経験を積みながら資格取得を目指せる点にあり、収入を得ながらキャリアアップを図れることが特徴と言えるでしょう。
受験するには3年以上の実務経験と実務者研修の修了という2つの要件を満たすことが求められます。

働きながら資格を取るための支援制度もあり、多くの人がこの方法で国家資格を取得しているのが現状です。
参考|社会福祉振興・試験センター:受験資格:資格取得ルート図
養成施設ルート:早く資格取得を目指す学生向け
高校卒業後に、介護福祉士養成施設(専門学校、短期大学、大学)に進学し、所定のカリキュラムを修了して国家資格取得を目指すルートです。
通学期間は2年以上が一般的ですが、福祉系大学や社会福祉士養成施設等の卒業者は1年で修了できる場合もあります。

このルートの利点は、体系的な教育を受けられるため、知識と技術を深く学べることにあります。
なお、法改正により、2027年度以降の卒業生からは国家試験の受験が必要になるなど、制度変更の過渡期にあるため、入学時期と卒業時期の確認をしておくことが大切です。
参考|社会福祉振興・試験センター:受験資格(養成施設ルートについて)
福祉系高校・EPAルート:特定の対象者に特化した道
福祉系高校ルートは、福祉科や福祉コースのある高校に入学し、定められた単位を取得して卒業時に国家試験を受験する方法です。
最短の18歳で介護福祉士になれるため、若くしてキャリアをスタートできる利点があります。
一方、EPAルートは、経済連携協定に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムからの候補者が日本の介護施設で働きながら資格取得を目指すものです。

これらは対象者が限定されますが、それぞれ特化した支援体制やカリキュラムが用意されています。
参考|社会福祉振興・試験センター:受験資格:資格取得ルート図
2.働きながら目指す「実務経験ルート」の必須要件

社会人が多く選択する実務経験ルートですが、受験資格の要件は細かく定められているのが実情です。
「3年働けばよい」という単純なものではなく、日数ベースでの規定や、必須研修の受講タイミングなど、事前に把握すべきルールも存在します。
要件不足で受験できない事態を避けるため、ここでは計算方法やスケジュールの組み方を解説します。
「実務経験3年以上」の定義と計算方法
「3年以上の実務経験」とは、単に3年間会社に所属しているだけでは満たされません。
具体的には、従業期間(在籍期間)が1095日以上かつ従事日数(出勤日数)が540日以上という2つの条件を同時に満たす必要があります。
従業期間には産休や育休、病気休暇なども含まれますが、従事日数は実際に勤務した日のみがカウントされる仕組みです。
パートタイム勤務などで週の出勤日数が少ない場合、在籍期間が3年を超えていても、従事日数が540日に達していないケースがあるため注意しましょう。

1日あたりの勤務時間は問われず、短時間の勤務でも1日として計算されます。
ただし、同じ日に複数の事業所で掛け持ち勤務をした場合でも、従事日数は「1日」としてカウントされるため(ダブルカウント不可)、注意が必要です。
注意点
掛け持ち勤務の場合
同じ日に複数の事業所で働いた場合でも、従事日数は「1日」としてカウントされます(ダブルカウントは不可)。単純な足し算にならない点に注意が必要です。
| 勤務形態の例 | 3年間の従事日数 | 判定 |
|---|---|---|
| 週5日勤務 | 約780日 | OK(540日以上) |
| 週3日勤務 | 約468日 | NG(不足) |
※週3日勤務の場合、540日を満たすには約3年半の期間が必要です。
参考|社会福祉振興・試験センター:受験資格(実務経験の範囲)
「実務者研修」の役割と受講スケジュールの組み方
実務者研修は、質の高い介護サービスを提供するために必要な知識と技術、特に医療的ケアの基礎などを習得する研修です。
無資格者の場合、450時間のカリキュラムを受講することになります。
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了者は130時間が免除され、320時間で修了可能です。
多くの講座は通信学習とスクーリング(通学)を組み合わせており、働きながらでも受講しやすいものの、無資格からだと6ヶ月程度かかると見込んでおくべきでしょう。

実務者研修修了見込みでも受験申し込みは可能なため、試験日までに修了証が手元になくても、年度末までに修了すれば問題ありません。
参考|厚生労働省:教育訓練給付制度(実務者研修等の講座情報)
教育訓練給付制度と資格取得支援の活用
資格取得にかかる費用負担を軽減するために、公的な支援制度や職場の制度を活用できます。
国の教育訓練給付制度は、一定の条件を満たす雇用保険の被保険者が厚生労働大臣指定の講座を受講・修了した場合、受講費用の20%(上限10万円)が支給される仕組みです。
また、多くの介護事業所では「資格取得支援制度」を設けており、受講費用の全額または一部負担、スクーリング日の出勤扱いなどのサポートを行っています。

転職時や就職時にこれらの制度の有無を確認することは、自身のキャリアプランと経済的なバランスを考える上で有効な手段と言えるでしょう。
3.学校に通って目指す「養成施設ルート」の注意点

専門学校などの養成施設ルートは、集中的な学習環境が魅力ですが、近年制度が変化しているため注意が必要です。
以前とは異なり、卒業するだけでは資格が得られないケースや、国家試験の受験が必要となる期限が迫っています。
これから進学を考える方が、卒業後に困らないよう、制度変更のポイントと経過措置について確認しておくことが大切です。
2027年度以降の「国家試験完全義務化」と経過措置
養成施設ルートにおける注意点は、国家試験の義務化に伴う経過措置の期限です。
2017年度から2026年度末までに養成施設を卒業する人は、国家試験に合格しなくても、卒業後5年間は「期限付き」で介護福祉士の資格が付与されます。
この期間中に国家試験に合格するか、5年間継続して介護業務に従事すれば、期限が解除され正式な資格となる仕組みです。
しかし、2027年度以降の卒業生からはこの経過措置が終了し、国家試験に合格しなければ介護福祉士の資格を取得できなくなる点には注意が必要です。

これから進学を検討する際は、卒業年度がどの区分に該当するかを確認しておきましょう。
参考|社会福祉振興・試験センター:受験資格(養成施設ルートについて)
4.介護福祉士国家試験の難易度と合格率

介護福祉士国家試験は、かつては比較的合格しやすい試験と言われていました。しかし、近年は難化傾向にあるとも言われています。
合格率の数字だけを見て油断すると、不合格を招く恐れがあるのです。
ここでは、最新の試験結果や、合否を分ける「0点科目」の仕組みなど、試験の実態と対策について解説します。
合格率の低下傾向と試験の難化について
2025年1月に実施された第37回介護福祉士国家試験の合格率は78.3%となり、前回から低下しました。これは、試験問題の質の向上や難化傾向を示唆していると言えるでしょう。
合格基準点は総得点の約60%(補正あり)とされていますが、問題の難易度によって変動するため、60%ギリギリを目指すのではなく、余裕を持った得点力を身につける必要があります。

合格率が高いからといって油断せず、過去問演習や模擬試験を通じて実力を確認し、確実な知識を定着させることが求められます。
参考|厚生労働省:介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移
「0点科目」による不合格リスクと対策
国家試験には、総得点の基準だけでなく、「11科目群すべてにおいて得点があること」という合格条件が存在します。これを0点科目、または、足切りと呼ぶこともあります。
たとえ総合点が合格基準を上回っていても、たった1つの科目群でも0点を取ってしまうと不合格になります。
特に問題数が少ない科目は、1問の間違いが致命的になるケースもあるのです。

※「科目」ではなく「11の科目群」です。例えば「こころとからだのしくみ」と「医療的ケア」は合わせて1つの科目群として扱われるため、両方の合計得点で判断されます。
苦手科目を放置せず、全科目をまんべんなく学習し、最低でも各科目で1点は確保できるような対策が求められます。
なお、将来的には「パート合格(科目別合格)」制度の導入も議論されています。
これは、一度合格した科目群について一定期間免除される仕組みであり、働きながら受験する人にとって負担軽減につながる可能性があります。(※現時点では検討段階です)
5.資格取得がもたらすメリット:年収とキャリア

介護福祉士の資格取得は、専門家としての信頼を得るだけでなく、収入面や将来のキャリアにおいても利点となります。
具体的にどれくらい給与が変わるのか、また取得後にどのようなキャリアパスが広がるのかを知ることは、学習のモチベーション維持につながる要素です。
ここでは具体的なデータと将来性について解説します。
年収差と処遇改善加算による経済的メリット
厚生労働省のデータによると、介護福祉士(常勤)の平均給与額は、無資格者と比較して月額約5万円、年収換算で約60万円高い水準にあります。

これは基本給に加えて資格手当が支給されることや、勤続年数に応じた昇給が主な要因です。
さらに、国の「特定処遇改善加算」制度では、経験・技能のある介護職員に対して重点的な給与改善を行うことが推奨されており、長く働き続けるほど給与が上がりやすい仕組みが整えられています。
参考|Kiracare:介護職の給料はいくら?平均給与額や年収アップ方法
認定介護福祉士やケアマネジャーへのキャリアパス
介護福祉士を取得した後は、現場でのリーダーシップを発揮するだけでなく、さらに専門性を高めるキャリアパスが開かれます。
例えば、「認定介護福祉士」は、より高度な知識と指導力を有する上位資格として位置づけられている資格です。
また、介護福祉士として5年以上の実務経験を積むことで、「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の受験資格が得られ、ケアプランの作成や相談業務など、活躍の場を広げることが可能になります。

資格はゴールではなく、キャリアを発展させるための基盤となります。
参考|厚生労働省:介護福祉士の資格取得方法(キャリアパス関連)
6.介護福祉士に関するよくある質問(FAQ)

介護福祉士を目指す方から寄せられることの多い疑問について回答します。受験資格や試験後の手続きなど、事前に知っておくことで不安を解消できるポイントをまとめました。
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学歴がなくても介護福祉士になれますか?
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はい、実務経験ルートを選択すれば、学歴に関係なく受験資格を得ることができます。

中卒や高卒の方でも、3年以上の実務経験と実務者研修の修了があれば、国家試験を受験し、資格を取得することが可能です。
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試験に不合格だった場合、実務者研修も受け直しになりますか?
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いいえ、一度修了した実務者研修の資格は生涯有効です。

したがって、翌年以降に再受験する場合、実務者研修を再度受講する必要はありません。
学科試験の勉強のみに集中して再挑戦できるのが特徴です。
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実務経験証明書はいつ準備すればよいですか?
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受験申し込みの際に必要となります。
通常、試験前年の8月頃から申し込みが始まるため、その時期に合わせて勤務先の事業所に作成を依頼するのが一般的です。

過去に複数の事業所で勤務していた場合は、それぞれの事業所から証明書を取り寄せる必要があるため、早めの準備が推奨されます。
7.実務経験の確認と計画的な準備が合格への近道
介護福祉士は、給与向上やキャリアの安定に直結する価値ある国家資格です。取得には複数のルートがありますが、社会人の多くは実務経験ルートを選択します。
重要なのは、従事日数を正確に把握し、試験に向けた学習と実務者研修のスケジュールを計画的に進めることです。
難化傾向にある試験ですが、制度を正しく理解し、公的支援を活用しながら準備をすれば、働きながらでも合格を目指せるでしょう。まずは受験資格の確認から始めてみましょう。






