「医療事務の給料が低い」と感じていても、その原因や対策を正しく理解している人は少ないのが現実です。
この記事では、給料が上がりにくい構造的な理由から、今すぐ実践できる収入アップの方法まで、データをもとに解説します。
- 医療事務の給料が低いと言われる構造的な理由
- 開設者・地域・経験年数による給与の差
- 今の職場でできる給与アップの具体的な方法
1.医療事務の給料はなぜ「低い」と言われるのか?

平均年収だけで判断するのは早計です。勤務先の規模・地域・雇用形態によって給与は大きく変わります。
まずは実態をデータで確認しましょう。
全国平均と他職種との比較
医療事務の給料の平均は月額は19.9万円、年収は481.4万円です。
給与比較
医療事務
一般事務
一般事務は医療事務に比べ、年収で約48万円高い水準にあります。
医療現場という専門性の高い環境で、レセプト(診療報酬明細書)作成という責任の重い業務を担っている割には、報酬が見合っていないと感じる方が多いのが現実です。
参考:厚生労働省| 職業情報提供サイト(job tag)医療事務 – 職業詳細/職業情報提供サイト(job tag)一般事務 – 職業詳細
医療形態の違いや地域による給与格差の実態
医療形態の違い
🏥 開設者別 一般病院 事務職員 給与比較
開設者別の事務職員の給与には大きな差があります。国立病院が約547万円と最も高く、公立・公的といった公的機関が続きます。
一方、医療法人や個人病院は380〜390万円台にとどまり、国立との差は約163万円にのぼります。
開設者の資金力や給与体系の違いが、待遇格差に直結していると言えるでしょう。
地域別の平均給与
🏥 医療事務 都道府県別 平均年収
最高
東京都
589.3万円
全国平均
-
412.5万円
最低
長崎県
334.7万円
医療事務の年収は地域によって大きな差があります。
東京(589万円)や石川(548万円)など都市部・一部地方で高い一方、長崎(334万円)や岩手(344万円)など地方では低い傾向にあります。
最高と最低の差は約255万円にのぼり、勤務地の選択が収入に直結すると言えます。
参考:厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)医療事務 – 職業詳細
2.医療事務の給料が上がりにくい理由

個人の努力だけではなかなか変えられない、業界特有の構造があります。原因を正しく理解することが、対策を考える第一歩です。
診療報酬制度と人件費の相関関係
医療機関の収入は、国が定める「診療報酬」によって決まるため、自分たちで商品の価格を上げることはできません。
🏥 診療報酬制度のしくみ
患者
医療機関
保険者
審査支払機関
※ 診療報酬は国が定める点数表に基づき算定されます
そのため、経営の余力が限られ、スタッフの給与を大幅に引き上げることが難しい構造です。
特に中小規模のクリニックや個人病院では、人件費の増加が経営を圧迫するリスクがあります。
参考:公益社団法人日本医師会|なるほど診療報酬!|国民のみなさまへ
無資格・未経験からでも参入しやすい職種特性
医療事務は、専門資格がなくても就業できるケースが多く、参入障壁が低い職種です。そのため、求職者が集まりやすく、給与水準が上がりにくい構造になっています。
また、資格を取得しても給与への反映が小さい職場も多く、スキルが収入に直結しにくい点が課題です。
昇給・キャリアパスの不透明さ
医療事務は、一般企業のように昇進・昇格のルートが明確ではなく、長く勤めても役職や給与が上がりにくい傾向があります。
🏥 医療事務 経験年数別 所定内給与額
経験0年
26.03万円
15年以上
36.74万円
15年間の上昇幅
+10.71万円
医事課長などの管理職ポストは数が限られており、多くのスタッフは横並びのキャリアになりがちです。
しかし、スキルを給与に反映させる仕組みづくりが進められている医療機関もあります。
参考:厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)医療事務 - 職業詳細
3.今の職場で給料を上げるためにできること

「給料が低いのは業界のせい」と諦める前に、今の職場でできることがないか確認しましょう。
戦略的に動くことで、数千円から数万円単位での月収アップの可能性もあります。
資格手当の支給
医療機関によっては、特定の資格に対して「資格手当」を支給しています。資格手当は月額3,000円〜7,000円ほどが相場です。
しかし、民間アンケート調査によると、実際に手当が支払われているのは約2割と少ないのが現状です。
資格取得は給与アップの有効な手段ですが、手当支給の有無は職場によって大きく異なるため、就職・転職の際には事前に確認することが重要です。
参考:セカンドラボ株式会社|コメディカルドットコム|医療事務の資格おすすめ5選!診療報酬請求事務試験の終了後の正解は?
レセプト点検スキルの向上と業務範囲の拡大
医療機関にとって「査定(診療報酬の減額)」を防ぐスキルの高い事務員は非常に貴重です。
レセプトの精度を高め、返戻を減らす実績を積むことで、交渉のカードを増やすことができます。
また、受付・会計・クラーク業務など複数の業務をこなせる「多能工」として活躍することで、職場内での代替不可能な存在となり、昇給交渉を有利に進めやすくなります。
上司に昇給交渉をする
給与は自ら交渉しなければ上がりにくい職種でもあります。日頃の業務実績や習得したスキル、資格取得などを具体的に示しながら、上司に昇給を申し出ることが重要です。
交渉の際は感情的にならず、自分の貢献を客観的なデータで伝えると説得力が増します。年度末や評価面談のタイミングを狙うのが効果的です。
4.給料の低さを理由に転職を考える際のチェックポイント

安易な転職は後悔のもとです。給与だけでなく、待遇・将来性・働きやすさを総合的に比較したうえで、冷静に判断しましょう。
給与水準や待遇を総合的に評価する
まず、自分の給与が本当に低いのかを客観的に把握することが大切です。地域・経験年数・雇用形態を考慮した平均水準と比較してみましょう。
給与額だけでなく、賞与・交通費・資格手当・社会保険の有無なども含めて総合的に比較することが重要です。
また、勤務時間・休日数・有給取得率・職場の人間関係なども含めた「働きやすさ」を加味すると、転職後に後悔するリスクを減らせます。
転職先の給与水準と将来性を調べる
転職先候補の求人票に記載された給与だけでなく、入職後の昇給制度・評価基準・キャリアパスも確認しましょう。
医療機関(国立・公立・医療法人など)によって給与水準は大きく異なります。
入職後に「思っていた給与と違う」とならないよう、面接時に具体的な数字を確認することが重要です。

労働契約締結時には、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが労働基準法で義務付けられています。
転職のタイミングと市場の需要を見極める
医療事務の求人は年間を通じて比較的安定していますが、4月の新年度に向けた2〜3月や、10月前後に求人が増える傾向があります。
経験年数や保有資格によって採用されやすい時期も異なるため、転職活動を始める前に求人市場の動向を調べ、自分のスキルが評価されやすいタイミングを見極めることが大切です。
5.医療事務の給料に関するよくある質問
医療事務の給料について「実際どうなの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
ここでは特によく寄せられる疑問をまとめました。
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医療事務の平均給与はどのくらいですか?
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医療事務員の平均年収はおよそ480万円前後とされています。
ただし、勤務先の規模・地域・雇用形態(正社員・パート)によって大きく異なります。
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医療事務はパートが多いと聞きますが、時給はどのくらいですか?
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パート・アルバイトの時給は地域によって差がありますが、全国平均では1,500円程度が目安です。
都市部ではやや高く、地方では最低賃金に近い水準になることもあります。
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病院とクリニックでは給与に差がありますか?
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一般的に、大学病院や総合病院など規模の大きい医療機関のほうが給与水準は高い傾向があります。
クリニックは規模が小さいぶん給与がやや低めになることもありますが、残業が少なく働きやすい環境であることが多いです。
6.医療事務の給料が低い理由を理解し、戦略的に収入アップを目指そう
医療事務の給料が低いと言われる背景には、診療報酬制度や参入障壁の低さなど、業界特有の構造があります。
しかし、資格取得やレセプトスキルの向上、昇給交渉など、今の職場でできることは少なくありません。
まずは自分の給与水準を客観的に把握し、戦略的に行動することが収入アップへの第一歩です。






