介護職の有効求人倍率は3.97倍(令和7年3月)と、全職種平均の約3.4倍に達しています。一方で介護事業者の倒産は2025年に過去最多の176件を記録し、現場の疲弊は深刻です。
この矛盾した現実をデータで読み解きながら、売り手市場を活かした転職戦略を解説します。
- 介護職の求人倍率が全職種平均の約3倍超と高止まりしている理由
- 介護事業者の倒産急増が現場にもたらす「負のスパイラル」の実態
- 売り手市場を活かして良い職場を選ぶための具体的な転職戦略
1.介護職の有効求人倍率は?

介護関係職種の有効求人倍率は、令和元年9月の4.35倍をピークに多少の増減を繰り返しながらも、令和7年3月時点で3.97倍と依然として高水準を維持しています。
一方、全職業の1.16倍と比較すると約3.4倍の開きがあり、介護分野における深刻な人手不足が続いていることがわかります。
2.介護職の求人倍率が高いのはなぜ?

高齢化による需要増加と労働力不足が同時進行する構造的な問題が背景にあります。賃金・労働環境の課題も絡み合い、人手不足が解消されない理由を掘り下げます。
高齢化による需要爆発と労働力人口の減少
需要の爆発と担い手の減少
高齢化と少子化が同時進行し、介護の「求める側」と「担う側」が真逆の方向に動いています。
需要側
増加↑
高齢化により
介護ニーズが急拡大
供給側
減少↓
少子化により
労働力人口が縮小
需要と供給のバランスが根本から崩れ、慢性的な人手不足が続いています。
日本では急速な高齢化により介護サービスの需要が爆発的に拡大している一方、少子化による労働力人口の減少が同時進行しています。
介護職は身体的負担が大きく賃金水準も低いため、若い世代から敬遠されがちです。需要は増え続けるのに担い手が増えないという構造的なミスマッチが、高い求人倍率の根本的な原因となっています。
賃金水準の低さ
低い賃金水準と高い離職率
専門性の高さに対して、報酬が見合っていないことが慢性的な人材流出を生んでいます。
他産業より
低い賃金
負担に見合わず
離職が増加
常に求人を
出し続ける状態
「採用しても定着しない」悪循環が、求人倍率を押し上げ続けています。
介護職は人の命や生活を直接支える専門性の高い仕事でありながら、他産業と比べて賃金水準が低い傾向にあります。
身体的・精神的な負担の大きさに見合った報酬が得られないと感じる職員も多く、離職につながっている場合もあります。
せっかく採用しても定着しないという悪循環が生まれており、常に求人を出し続けなければならない事業所が多いことも、高い求人倍率を押し上げる一因となっています。
労働環境の課題と職場定着の難しさ
業務負担による悪循環
体力的・精神的な消耗が離職を招き、残ったスタッフへの負担がさらに重くなる構造が生まれています。
体力的な消耗
夜勤・交代制勤務により、体力的な負担が大きく蓄積しやすい。
精神的なストレス
利用者・家族への対応など、高い精神的負荷が続く。
人手不足 → 負担増 → さらなる離職
人が辞めるほど残るスタッフへの負荷が増し、次の離職を生む負のループに陥っています。
介護現場では業務形態により、夜勤・交代制勤務があるため、体力的な消耗が激しいのが実情です。
また、利用者やその家族への対応など精神的なストレスも大きく、心身ともに限界を感じ、離職につながるケースもあります。
職場によってはスタッフの人数が不足しているため、一人あたりの業務負担がさらに増すという悪循環も起きています。
こうした労働環境の厳しさが、求職者に敬遠される大きな要因となっています。
3.介護事業の倒産急増が示す、現場崩壊の危機

2025年の介護事業者倒産は過去最多の176件に達しました。数字の裏側にある現場へのしわ寄せと、負のスパイラルの実態を見ていきます。
福祉・介護事業の倒産数の推移
老人福祉・介護事業の倒産数の推移
2025年の倒産件数
過去最多を更新
2007年比の増加倍率
35件 → 176件
訪問介護事業の倒産
全体の約52%
年別倒産件数の推移(件)
訪問介護が最大の課題。2025年の倒産91件はカテゴリ別で最多。
2022年以降、急増フェーズへ。コロナ禍後の経営悪化・人件費高騰が重なり143件→176件と右肩上がり。
小規模事業者ほど脆弱。人材確保コストの増大と介護報酬の伸び悩みが経営を圧迫。
2007年に35件だった老人福祉・介護事業の倒産は、2025年に176件と約5倍に膨らみ過去最多を更新しました。特に訪問介護が91件と全体の半数超を占めています。
コロナ禍後の経営体力低下に人件費の負担などが重なり、小規模事業者を中心に淘汰が加速しています。
参考:株式会社東京商工リサーチ|2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加
現場へのしわ寄せと「負のスパイラル」
事業者の倒産増加は、介護職員へのしわ寄せとなって現れます。人手不足による一人あたりの業務負荷増大、賃金上昇の停滞が離職を招き、さらなる人手不足を生む「負のスパイラル」に陥っています。
担い手が減るほどサービスの質は低下し、利用者へのしわ寄せも避けられません。構造的な問題の解決なくして、現場の疲弊は止まりません。
4.「売り手市場」を勝ち抜くための転職戦略

求人倍率が高い今こそ、転職の主導権は求職者にあります。ブラック職場を避けながら、自分に合った職場を選ぶための実践的な戦略を紹介します。
求人倍率が高いからこそ「選ぶ権利」を行使する
「選ばれる側」から「選ぶ側」へ
高い有効求人倍率を背景に、条件の悪い職場に妥協する必要はありません。複数の軸で比較し、優先順位を明確にして交渉に臨みましょう。
介護職の有効求人倍率は全職種平均を大きく上回り、求職者が職場を選べる「売り手市場」が続いています。だからこそ、条件の悪い職場に妥協する必要はありません。
給与・休日・職場環境・離職率など複数の軸で比較し、自分の優先順位を明確にしたうえで交渉する姿勢が重要です。「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」として転職活動に臨みましょう。
ブラックな職場を避けるチェックポイント
ブラック職場を見極める3つのチェック項目
求人票だけでは職場の実態は見えません。入職前に必ず以下を確認しましょう。
数値の開示を求める
離職率・平均勤続年数・有給消化率・残業時間を具体的に確認。「人員配置が法定基準ギリギリ」な職場は要注意。
必ず職場見学を依頼する
スタッフの表情・施設の清潔感・現場の雰囲気を自分の目で確かめる。見学を断る職場はそれ自体がサインです。
外部の口コミも判断材料に
求人票や面接では見えない現場の声が口コミサイトに残っています。複数のサイトを横断して傾向をつかみましょう。
求人票だけでは職場の実態は見えません。離職率・平均勤続年数・残業時間の開示を求めることが第一歩です。面接時には職場見学を必ず依頼し、スタッフの表情や施設の清潔感を自分の目で確かめましょう。
「人員配置が法定基準ギリギリ」「有給消化率が極端に低い」といった数字も要注意。口コミサイトの評判も判断材料の一つになります。
未経験なら「教育体制」、経験者なら「条件交渉」
まず確認すべきは
「教育体制」
入職後にどれだけ成長できる環境かが最重要です。
研修カリキュラムの充実度
研修内容・期間・OJTの有無を具体的に確認しましょう。
プリセプター制度の有無
先輩スタッフが新人を個別にサポートする制度があるか確認を。
資格取得支援の有無
取得費用補助や勉強時間の確保ができるかも重要です。
「育ててもらえる環境」を選ぶことが、長く働き続けるための第一歩です。
資格・スキルを武器に
「条件交渉」へ
経験年数に見合った待遇を遠慮せず堂々と求めましょう。
給与・処遇の交渉
資格を明示し、市場相場をもとに給与の上乗せを交渉しましょう。
役職・キャリアパスの確認
スキルに見合うポジションへの道筋を入職前に確認しておきましょう。
勤務形態の調整
夜勤回数・シフト希望など、生活に合わせた働き方を交渉する権利があります。
求人倍率が高い今は、経験者が最も有利に動けるタイミングです。
未経験者が重視すべきは、入職後の教育体制です。新人の教育制度や研修カリキュラムの充実度を必ず確認しましょう。
一方、経験者は保有資格・スキルを武器に条件交渉を積極的に行うべきです。介護福祉士やケアマネジャーの資格があれば、給与・役職・勤務形態の交渉余地は十分あります。経験年数に見合った待遇を堂々と求めてください。
5.介護職の求人倍率は高水準|今こそ転職で「選ぶ側」に回るチャンス
介護職の求人倍率は全職種平均の約3倍超と、依然として高水準が続いています。業界全体で倒産や人手不足が深刻化する一方、それはあなたが職場を選べる環境でもあります。
教育体制・待遇・職場環境を自分の軸で比較し、妥協せず交渉する姿勢が、長く働ける職場との出会いにつながります。






