「介護職は離職率が高い」と信じられている方も多いのではないでしょうか。しかし、公的データによると、介護職の離職率は12.4%と過去最低水準に下がっています。
本記事では、データに基づく現状を整理し、長く働ける職場をどう見つけるかまで解説します。
- 介護職の離職率の現状と、全産業と比べた位置づけ
- ブラック施設の見分け方と、ホワイト施設の見極め基準
- 介護業界への転職で抱きがちな疑問とその解決策
1.介護職の離職率はどのくらい?

「介護はすぐに人が辞める」というイメージがありますが、実際のデータを見ると状況には変化が見られます。
国の施策や働き方改革が進み、環境は安定してきました。公的データをもとに、現在の状況と離職率が下がった理由を解説します。
介護職の離職率は12.4%
公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度調査では、介護職の離職率は12.4%で過去最低水準を記録しました。
離職理由別・離職率の推移
個人的理由による離職率(男・女・男女計)
女の離職率
14.3%
最高値(H29年度)
男女計
11.5%
最高値(H29年度)
男の離職率
9.4%
最高値(R03年度)
一方、厚生労働省の全職種データでは男女計の離職率がR04年度で10.7%という数字になっています。
つまり介護職は全職種平均よりも約2ポイント高い水準にあるが、その差は縮まりつつあります。
このデータから、介護職は他産業と比べても離職率が高いわけではないことが読み取れます。労働環境が過酷という印象が強いですが、実際には多くの職員が定着して働いています。
参考:公益財団法人介護労働安定センター|令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について/厚生労働省|令和6年雇用動向調査結果の概要
環境変化の影響
介護職の採用・定着策として、「賃金水準の向上」が採用に最も効果的(22.5%)なことが分かります。
一方、職場定着には「勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が最も効果的(25.7%)で、「人間関係が良好な環境づくり」も定着に大きく貢献(21.2%)。
離職防止には賃金だけでなく、勤務環境や人間関係の改善も重要な要素となっています。
参考:公益財団法人介護労働安定センター|令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
2.介護施設ごとの離職率の違い

離職率は施設の種類や規模によっても若干ですが変わります。
施設形態別の離職率では、特定施設(有料老人ホームなど)が15.1%と最高で、グループホーム(13.9%)も高い傾向にあります。
一方、小規模多機能型居宅介護が11.0%と最低で、老健や訪問介護も低い水準にあります。このことから、施設規模や勤務環境の違いが離職率に影響を与えていると考えられます。
参考:レバウェル株式会社|レバウェル介護|介護職の離職率が高い職場は?2024年までの推移や他業界との比較も紹介
3.介護職の主な退職理由とその背景

離職には、表に出にくい背景がある場合も多いです。
人間関係や経営方針との摩擦、業務と給与のギャップなど、実際に離職へとつながる理由を年代別にも整理します。
人間関係のトラブルと閉鎖性
退職理由として人間関係が多く見られます。介護職はチーム連携が不可欠ですが、閉鎖的な空間で過ごす時間も長いため、ストレスが蓄積しやすい環境です。
幅広い年齢層が混在することで、価値観の違いから摩擦が生じることもあります。
さらに、高圧的な職員や根強い派閥がある職場では雰囲気が悪化しやすく、相談しにくい状況のもとでは小さな不満がトラブルに発展しがちです。
そのような精神的負担が重なることで、退職を選ぶケースも増えています。
運営方針や理念への不満
介護職では、丁寧なケアを提供したい気持ちと、効率優先や人手不足による現実の間で葛藤を感じる職員も多いです。
さらに、現場の実態を軽視して利益を優先する経営判断がなされると、現場スタッフとの間で不信感が深まります。
そのような中で、利用者の安全や尊厳が十分に守られていないと感じるようになると、誇りを持って働くことが難しくなり、退職へと至る背景となっています。
業務量と給与のバランスへの不満
介護職は身体的・精神的に負担の大きい業務ですが、賃金水準は依然として低い傾向にあります。
業務量と給与のバランスが取れていないと感じる職員も多く、特に夜勤や休日勤務など不規則な勤務スケジュールが続く場合、労働に見合った報酬を得られないと感じるケースが増えています。
こうした不満が蓄積し、離職へとつながる要因の一つとなっていると考えられます。
年代による離職理由の傾向
なお、離職理由は年代によっても傾向が異なります。
29歳以下では採用率(31.4%)と離職率(18.7%)がともに最も高く、若い層で離職が多く見られます。30~39歳になると離職率は急に低下し、年齢が上がるにつれて離職率は低い水準で安定しています。
一方、60歳以上では採用率を超えて離職率が高くなっており、体力や勤務負担による退職も要因の一つと考えられます。
参考:公益財団法人介護労働安定センター|令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について
4.ブラック施設を見分けるポイント

求人や面接の段階には、離職率の高い職場に共通するサインがあります。見落としやすい具体的なポイントを、求人・見学・面接の各場面で解説します。
求人情報から読み取るリスク
3つの具体的な見極めポイント
1. 求人情報の「裏」を読む
万年求人や「アットホーム」の強調は、離職率が高い可能性があるため注意が必要です。基本給を低く抑え、不透明な手当で高く見せている求人には警戒しましょう。 📌 対策:労働条件は必ず書面で確認してください
常に求人を出し続けている事業所は、慢性的な人手不足や離職率の高さを示唆している可能性があります。また、仕事内容の実態よりも「アットホーム」などの雰囲気を強調する広告には注意が必要です。
給与条件についても、基本給を低く抑えて手当で見た目の高さを演出しているケースや、固定残業代の内訳が不明瞭な場合は警戒のサインとなります。
こうした曖昧な表現や不透明な条件を多く見せる事業所は、労務管理が十分に行き届いていない可能性が高いため、条件の詳細は必ず書面で確認することが大切です。
施設見学で確認する現場の状況
3つの具体的な見極めポイント
2. 見学で「素の現場」を知る
玄関の臭いや古い掲示物は管理不足の兆候といえます。あえて「5分間の待機時間」を設け、案内役がいない時の職員の言葉遣いや表情をじっくり観察しましょう。 📌 対策:職員同士のリアルな会話を聴いてください
スタッフの様子も重要なチェックポイントです。挨拶への反応が薄かったり、表情に余裕がなかったりする職場は、業務過多や慢性的なストレスの兆候と考えられます。
また、利用者への接し方が丁寧かどうかは、その職場のケアの質を端的に表しています。短時間の見学であっても、現場の空気感や職員同士の連携の様子を観察することで、多くの実態が読み取れます。

見学は実態を知る重要な機会です。
施設内のケアや清掃が行き届いているかを判断できます。
また、職員同士の会話や利用者への言葉遣い(タメ口や命令形になっていないか)を確認することで、職場のリアルな空気を察知できます。
面接時の対応と採用の焦り
3つの具体的な見極めポイント
3. 「採用の焦り」を見逃さない
威圧的な態度や質問への不誠実な回答はハラスメントの予兆です。「明日から来れる?」と採用を急ぐ職場は、人手不足が非常に深刻な証拠といえます。 📌 対策:対等な対話ができるかを確認しましょう
面接官の態度にも、その職場の体質が現れます。威圧的な対応や、質問への誠実さがない場合はハラスメントのリスクが潜んでいる可能性があります。
また、労働条件の説明が曖昧なまま採用が進むようであれば、その事業所の透明性に疑問が生じます。面接は企業が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が企業を見極める場でもあります。

「いつから来られますか」「明日からでも」と採用を急ぐ場合も要注意です。
誰でもいいから人を確保したいという深刻さが表れているからです。
5.ホワイト施設を見極める基準

安心して働ける職場には、客観的に確認できる指標があります。処遇改善加算やICT導入、教育体制など、信頼できる施設の見つけ方を解説します。
処遇改善加算の取得状況
優良な職場を見極めるポイント
1. 取り組みの「本気度」を知る
加算区分は給与や職場改善への姿勢を示す重要な指標です。特に最上位の「新加算Ⅰ」を取得している事業所は、国の定める厳しい要件をクリアしている証拠といえます。 📌 注目:キャリアパスや研修制度の充実度を確認しましょう
処遇改善加算の取得状況は、介護施設の賃金に対する姿勢を見極める重要な指標です。
・賃金体系の整備および研修の実施等
加算を積極的に取得し、その財源を職員の賃金改善につなげている施設は、職員の定着を重視していると考えられます。
求職者は希望する施設について加算の取得・活用状況を事前に確認することが、ホワイト施設の見極めに役立ちます。
ICT活用と教育研修の充実
優良な職場を見極めるポイント
2. 制度活用は「安心」の証
国の制度を適切に活用している事業所は、法令遵守の意識が非常に高い傾向にあります。中長期的なキャリア形成を支援してくれる、信頼できる職場である可能性が高いといえます。 📌 判断:適切な労務管理がなされているかを重視しましょう
タブレットによる記録や見守りセンサーなどの導入は、施設が職員負担の軽減に投資している証拠です。
こうしたテクノロジーによる効率化が進む職場では、残業の削減やケアの質の向上につながりやすく、全体として働きやすい環境が整っています。
また、資格取得支援や新入職員向けのメンター制度など教育体制の充実も重要な見極めポイントです。
これらが整っている職場は、職員を単なる労働力として捉えず、成長を支援する組織としての姿勢が明確に現れていると考えられます。
6.介護業界への転職で抱きがちな疑問と解決策

未経験や体力・給与への不安など、介護業界への転職前に多く寄せられる疑問を整理し、実践的な対策や視点を紹介します。
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介護業界に経験がないと採用されますか?
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経験・資格なしでも採用されるケースは多いです。施設によっては入職後に研修やメンター制度を設けており、先輩職員のサポートのもとで実務を学ぶことができます。
まず無経験対応の求人を探し、ある程度の経験を積んだのち資格取得を目標とするルートが一般的です。
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体力に自信がないが、介護職務に耐えられるか不安です。
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介護職には確かに身体的負担を伴う業務がありますが、近年はリフト・介助機器やテクノロジーの導入により負担が軽減される施設も増えています。
また、自身の体調を優先できる勤務環境を整えている施設も多いため、まず見学や短期勤務を経験してみることをお勧めします。
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給与は本当に低いのでしょうか?
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介護職の平均賃金は他の職種と比べると低い傾向にありますが、処遇改善加算の導入や政府による賃金引き上げの取り組みにより、近年は改善傾向にあります。
施設によって給与に幅があるため、求人情報だけでなく加算の取得状況や実際の支給額も確認することが重要です。
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人間関係が難しそうで、職場に馴染めるか心配です。
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人間関係の問題は介護職でも多い離職理由の一つです。そのため、職場環境を事前に把握することが大切です。
見学や面談の際に、チームの雰囲気や相談窓口の有無などを質問し、自分に合った施設を選んでみてください。
7.介護職の離職率は本当に高い?長く働ける職場の見つけ方
介護職の離職率は、イメージよりも低い水準にある事実が明らかになっています。
施設や職場環境によって定着率には差がある場合もあるため、求人情報や見学・面接の段階で正確な情報を確認することが重要です。
処遇改善加算の取得状況や教育体制の充実など、客観的な指標も活用し、自分に合った職場を選んでください。






