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介護離職率13.1%の真実|失敗しない職場の見極め方

「介護業界は離職率が高い」「一度入ったら、きつくてすぐに辞めてしまう人が多い」このようなイメージを持っている方は、決して少なくないでしょう。

しかし、最新の統計データを見ると、そのイメージとは異なる「意外な実態」が浮かび上がってきます。

実は、現在の介護業界の離職率は13.1%まで低下しており、これは全産業の平均と比べても決して高い数字ではないのです。

なぜ、これほどまでに数字は改善したのでしょうか。そして、それなのに「人手不足」と言われ続けるのはなぜなのでしょうか。

この記事では、労働法規やキャリア形成の理論に基づいた客観的な視点から、数字の裏にある「業界の構造変化」と、データに基づいた「長く働ける職場の見極め方」を解説します。

この記事を読んでわかること
  • 「介護は離職率が高い」というイメージを覆す、最新の統計データと他産業との比較
  • 給与アップや職場環境の改善など、離職率が低下している背景
  • 事業所による「二極化」のリスクと、失敗しない職場選び

1.介護業界の離職率は高い?最新データが示す意外な実態

客観的なデータに基づいて、介護業界の「今」を見ていきましょう。世間のイメージと実際の数字には、大きなギャップが存在しています。

1:離職率は過去最低水準の13.1%へ低下

公益財団法人介護労働安定センターが公表した令和5年度(2023年度)の「介護労働実態調査」によると、介護職員の離職率は13.1%でした。

これは、前年度の14.4%から1.3ポイント低下しており、同調査において過去最低水準を記録しています。

かつて2007年度には21.6%という高い離職率を記録していましたが、そこから10年以上かけて、着実に職場環境の改善が進んでいることが分かります。

「次々と人が辞めていく業界」という認識は、もはや過去のものとなりつつあると言えるでしょう。

参考|公益財団法人介護労働安定センター:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

参考|厚生労働省:平成19年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査の結果について

2:宿泊・飲食業と比較しても高い定着率

「離職率13.1%」という数字は、他の産業と比べるとどの程度の水準なのでしょうか。

厚生労働省の「雇用動向調査(2023年)」によると、全産業の平均離職率は15.4%です。つまり、介護職の離職率は、全産業の平均よりも低い水準にあります。

特に、同じサービス産業の中で比較すると、その安定性は際立ちます。例えば、同年離職率が1番高かったのは「生活関連サービス業・娯楽業」の20.8%でした。

これらと比較すると、介護職はサービス業の中でも「人が定着しやすい、安定した雇用環境」にあると評価できます。景気の変動に左右されにくく、長く働き続けられる基盤が整ってきているのです。

参考|厚生労働省:雇用動向調査(2023年)

3:職種による違い

一口に介護職と言っても、職種によって定着率には差があります。専門性が高く、キャリアパスが明確な職種ほど、離職率が低い傾向にあります。

職種による定着率

  • サービス提供責任者(7.1%)
    訪問介護の現場をまとめるリーダー的役割。キャリアの目標となるため、高い定着率を誇ります。
  • 生活相談員(8.1%)
    相談業務が中心で、身体的な負担が比較的少ないことなどが要因と考えられます。
  • ケアマネジャー(10.0%)
    難関資格が必要な専門職。長くキャリアを積む人が多いため安定しています。

なお、現場の最前線を担う介護職員・訪問介護員の離職率は13.1%(2023年度)でした

職種別に比較してみると、キャリアを積んで専門職へステップアップしていくことで、より安定した働き方が可能になる業界構造が見て取れます。

参考|公益財団法人介護労働安定センター:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

2.なぜ離職率は下がっているのか?背景にある構造変化

なぜ離職率は下がっているのか?
背景にある構造変化

1. 処遇改善加算などによる給与・待遇の向上

待遇UP!

2. 働き方改革とICT導入による業務負担の軽減

負担DOWN!

では、なぜここまで離職率が低下し、職場環境が改善されたのでしょうか。

そこには、国による処遇改善施策と、事業所側の職場環境改善への努力という2つの大きな要因があります。

1:処遇改善加算などによる給与・待遇の向上

大きな要因の一つは、給与面の改善です。

国は「介護職員処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」、さらに近年の「ベースアップ等支援加算」など、次々と賃上げのための施策を打ち出してきました。

これにより、介護職員の平均給与は確実に上昇傾向にあります。

一部の調査では、男性常勤介護職の平均給与が35万円を超えているというデータもあります。

経済的な待遇が改善されたことで、他産業への人材流出が抑えられ、「この仕事を続けよう」と考える人が増えているのです。

参考|Jジョブメドレー:介護職(介護士)の求人3万626件を徹底調査!リアルな給料・年収はいくら?【2025年最新】

2:働き方改革とICT導入による業務負担の軽減

「きつい」と言われる業務負担の軽減も進んでいます。

多くの事業所で、見守りセンサーや介護記録ソフトなどのICT(情報通信技術)機器の導入が進みました。

これにより、夜間の見回り回数が減ったり、手書きの書類作成時間が大幅に短縮されたりと、スタッフの負担が物理的に減ってきています。

また、有給休暇の取得促進や残業の削減など、社会全体での「働き方改革」の流れが介護業界にも浸透。ワークライフバランスを取りやすい環境が整いつつあります。

3:職場環境への意識変化と「人間関係」の改善

離職の大きな原因となりやすい「職場の人間関係」にも変化が見られます。

離職率が低下した事業所にその理由を聞いた調査では、約64%が「職場の人間関係がよくなったため」と回答しています。

これは、ハラスメント防止の研修を行ったり、コミュニケーションを円滑にするための取り組みを行ったりする事業所が増えた結果です。

経営者や管理者が「スタッフが辞めない環境作り」に本気で取り組み始めたことが、数字として表れていると言えます。

参考|公益財団法人介護労働安定センター:令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について

3.ここに注意!平均値の裏にある「二極化」のリスク

3.ここに注意!平均値の裏にある「二極化」のリスク

ここまで「業界全体」の話をしてきましたが、これから仕事を探す方にとって重要な視点をお伝えします。それは、「平均値に惑わされてはいけない」ということです。

全体の離職率が下がっている一方で、事業所ごとの「格差」はむしろ広がっている現実があります。

1:「定着する職場」と「入れ替わりが激しい職場」の格差

介護業界では今、「二極化」が進んでいます。

介護業界の二極化

  • 優良な事業所
    離職率が0%〜10%程度で、誰も辞めないため求人もあまり出ない。職員が熟練していくのでケアの質も高い。
  • 課題のある事業所
    離職率が30%を超え、常に人が入れ替わっている。人間関係や労働環境が改善されず、採用してもすぐに辞めてしまう「負のスパイラル」に陥っている。

「業界平均が13.1%だから安心」なのではなく、「入る職場を間違えると、依然として厳しい環境で働くことになる」というリスクを理解しておく必要があります。

求職者にとっては、この「二極化」のどちら側の事業所を選ぶかが、キャリアの明暗を分けることになります。

2:人手不足の正体は「離職」から「採用難」へ

「離職率が低いなら、なぜ人手不足と言われるの?」と疑問に思うかもしれません。

実は、現在の介護業界の人手不足は、「人が辞めていく(離職)」ことよりも、「新しい人が入ってこない(採用難)」ことの方が主な原因になっています。

高齢化で利用者が増え続けているため、今のスタッフが辞めなくても、もっと多くのスタッフが必要なのです。

そのため、どの事業所も採用に必死になっています。求職者からすれば「売り手市場」であり、多くの選択肢の中から「良い職場」を選べるチャンスとも言えます。

4.失敗しない職場選び|離職率の低い事業所を見抜くポイント

4.失敗しない職場選び|離職率の低い事業所を見抜くポイント

では、どうすれば「二極化」の勝ち組である、離職率の低い優良な事業所を見分けることができるのでしょうか。

人事労務管理の実務的な観点から、求人票や面接でチェックすべき具体的なポイントを3つ紹介します。

1:【求人票】年間休日数と「加算」の取得状況を確認する

求人票を見る際は、給与の総額だけでなく、以下の項目に注目してください。

求人票を見るポイント

  • 年間休日数と有給消化率
    休みがしっかり確保されているかは、労働基準法などの法令遵守はもちろん、法人としてのコンプライアンス意識の高さを示します。
  • 処遇改善加算の取得状況
    「処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」を取得しているかを確認することで、厚生労働省が定めるキャリアパス制度や研修制度の要件を満たしている証明になります。

制度が整っている事業所は、職員を「使い捨て」にするのではなく、「育てて長く活躍してもらう」という意図を持っています。

2:【見学・面接】スタッフの挨拶とICT活用状況を見る

実際に事業所を訪れた際は、そこで働くスタッフの様子を観察することが重要です。

働くスタッフの様子

  • 挨拶と表情
    すれ違うスタッフが明るく挨拶をしてくれるか、表情に余裕があるかを見てください。人間関係が良い職場は、自然と雰囲気が明るくなるものです。
  • ICT機器の有無
    見守りセンサー(無線機)、タブレット端末などを使用しているか質問しましょう。テクノロジーへの投資は、「スタッフの負担を減らしたい」という経営者のメッセージです。

3:【制度】キャリアパスと評価制度の透明性をチェック

面接時の逆質問として、「どのような評価制度がありますか?」「リーダーになるにはどのような要件がありますか?」と聞いてみるのも有効です。

離職率を劇的に改善させた事業所の共通点は、「キャリアパスの可視化」ができていることです。

「ここで頑張れば、将来こうなれる」という見通しが立つ職場は、将来への不安が少なく、長く働く意欲が湧きやすい環境と言えます。

5.正しい知識で「長く活躍できる場所」を選ぶ

かつてのイメージとは異なり、現在の介護業界はデータ上でも「安定して働ける産業」へと変化しています。

しかし、その恩恵を受けているのは、しっかりと環境整備に取り組んでいる事業所とその職員たちです。

職場選びの3つのポイント

  • 離職率13.1%は、全産業平均よりも低い水準である。
  • 給与や労働環境は、国の施策企業の努力により改善傾向にある。
  • ただし事業所間の格差(二極化)があるため、個別の見極めが重要。

これらの事実を知った上で、求人票や面接を通じて「自分を大切にしてくれる職場」を見極めてください。

正しい知識と視点を持てば、介護の仕事は、長く安定してキャリアを築ける素晴らしい選択肢となるはずです。

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